乾いた年が続いた後、雨が戻った。
草原に水が染み込んだ。亀裂が閉じた。土が膨らみ、表面が滑らかになっていった。川は幅を取り戻し、流れが速くなった。岸の白い粉が消えた。
その者は岩陰にいた。
集団の半分は別の方向へ消えていた。戻らなかった。その者には、消えた者たちの顔がまだあった。目の奥の、どこか暗い場所に。
草が伸びた。獣の群れが戻ってきた。蹄の音が地面に響いた。集団の者たちは動いた。追った。子どもたちが走った。
その者は走らなかった。
脚が動かなかったのではない。動かさなかった。集団の後ろで、岩に手をついて立っていた。追いかける群れを見ていた。砂埃が上がった。鳥が一斉に飛んだ。
その者の鼻孔が開いた。
肉の焼ける匂いではなかった。まだ遠い。でも、草の中に獣の体温の匂いがあった。風が北から来ていた。その者の顎がわずかに上がった。
集団の緊張が変わっていた。
戻らなかった半分が消えてから、残った者たちの目に何かが宿っていた。笑う者が減った。子どもが泣いても、誰かが抱き上げるまでに間があった。食いものを取り合う唸り声が増えた。その者は古い方だった。年を重ねた体を、若い者たちは見ていた。違う目で。
その者は気づいていなかった。
三度目の雨季が来た。川が溢れた。低い場所に水が集まり、平原の端が泥の池になった。魚が来た。白鷺が来た。子どもたちが泥の中で転んだ。
その者は水際に立った。
波紋が広がった。その者の足首まで水が来た。冷たかった。足の裏に泥が絡んだ。その者は立ったまま動かなかった。水面に自分の形が映っていた。老いた体。脚の細さ。白くなった頭。
集団の中で何かが動いていた。
声でなかった。目配せでもなかった。若い者たちが近くにいると思えば、離れていた。獲物の前後を挟むような、その動き。その者の知らないところで、形が決まりつつあった。
その者は池の縁から一歩下がった。
何もなかった。水が動いただけだった。でも体が動いた。後ろに。反射のように。
温度が変わった。
その者の首の後ろ、皮膚の薄い部分に、熱があった。太陽ではなかった。雲が出ていた。それでも熱かった。その者は手を上げた。首の後ろに当てた。何もなかった。熱は皮膚の中から来ていた。
若い者の一人が近くに来た。
獲物を持っていた。腸が垂れていた。血の匂いがした。その者に近づいて、置いた。足元に。それだけだった。目を合わせなかった。去った。
その者は肉を見た。
拾った。匂いを嗅いだ。食べた。
夜になった。火の周りに体が集まった。その者は端にいた。火の明かりが届かない場所ではなかった。でも中心ではなかった。若い者たちの声が届いた。意味のない声。しかし抑揚があった。笑いに近い声。怒りに近い声。その者の耳には届いたが、体には入らなかった。
月が出た。
水面が白くなった。平原の向こうで、何かが動いていた。獣ではなかった。形が違った。背が高く、細く、二本の脚で立っていた。一人ではなかった。四つ、五つ。動いて、止まった。
集団の者が気づいた。
唸り声が上がった。火が揺れた。子どもたちが引き寄せられた。石が握られた。向こうの形はじっとしていた。動かなかった。月の下で、遠くで、ただ立っていた。
その者は立ち上がった。
なぜかはわからなかった。体が前に出た。集団の外側に。火の明かりから出た場所に。足が草を踏んだ。
向こうの形がこちらを見ていた。
距離があった。声は届かなかった。匂いも届かなかった。でもその者は止まらなかった。草の中を歩いた。足の裏に露が冷たかった。
集団の中で唸り声が大きくなった。
その者は聞いていなかった。
向こうの形が動いた。一つが前に出た。体が大きかった。腕が長かった。止まった。その者を見た。その者も止まった。二つの体が草原の中で向かい合っていた。月の光だけがあった。
その者の喉から音が出た。
意味はなかった。単音だった。喉が震えただけだった。
向こうの形が音を出した。
違う音だった。長く、低く、鼻に抜ける音だった。その者には聞いたことのない音だった。体の奥に届く音だった。
二つの体はそこにいた。
動かなかった。音はなくなった。草が揺れた。風があった。
集団から、足音が来た。
若い者たちが来た。石を持っていた。その者の後ろに立った。向こうの形は動かなかった。しばらくして、後ろを向いた。草の中に消えた。一つ、また一つ。
その者はずっと立っていた。
消えた後も、立っていた。草が戻った。月があった。
五年目の終わりに、その者は川の近くで倒れた。
朝だった。水を取りに行って、そのまま草の上に崩れた。体が崩れるように倒れた。膝が先についた。次に手。次に顔。草に顔が埋まった。集団の子どもが見ていた。近づいた。その者の肩を揺らした。動かなかった。もう一度揺らした。動かなかった。
子どもは走って戻った。
大人たちが来た。見た。その者の体に触れた者もいた。触れなかった者もいた。しばらくして、集団は移動した。その者を残して。川の近くの草の上に、体が残った。水の音があった。鳥の声があった。日が上がった。