紀元前298,205年
熱は三日前から始まった。
最初は火の番をしているときに気づいた。炎の色が変に見えた。赤がいつもより多かった。それだけだと思った。薪を足した。ちゃんと燃えた。
翌朝、体が立ちたがらなかった。
膝が地面についたまま、手をついたまま、そこにいた。年上の女が顔を覗き込んだ。何か低い音を出した。立てという意味かもしれなかった。立てなかった。
横にされた。
岩の陰に置かれた。そこは風がこなかった。日の当たる時間が短かった。熱の体には冷たかった。だが誰も動かさなかった。
集団の緊張は別のところにあった。
数日前から、岩の向こうに別の影が見えていた。背の高い影。歩き方が違う影。集団の中の大人たちは声を立てずに動いていた。目が同じ方向を向いていた。この者は影のことを知っていた。影が近づくたびに大人の体が固くなるのを、火の横で見ていた。
熱の中で、このことを何度か思った。
岩の向こうの影。大人の固い体。
何か冷たいものが腹の奥にあった。熱とは別のものだった。
三日目の昼、日が中天を過ぎたあたりで、集団の中に動きがあった。何人かが声を出し、体をぶつけ合い、それからしばらくしてまた静かになった。この者は岩の陰から首を持ち上げようとした。持ち上がらなかった。
地面が冷たかった。
体の熱が地面に吸われていくような気がした。そうではないとわかっていたが、そう感じた。
風があった。
その風が運んでくるものを、体が知っていた。煙の匂い。遠い草の匂い。水場の匂い。それから、血の匂い。
集団のほうから、誰かが来た。大人の男だった。この者を見た。しばらく見ていた。それから去った。
この者は地面を指でなぞった。
何も書こうとしていなかった。ただ指が動いた。砂が動いた。線ができた。意味はなかった。
指が止まった。
また動いた。今度は別の方向に。岩の粒を端に寄せた。そこに小さな窪みができた。それを見た。
それだけだった。
体が静かになったのはそれからすぐのことで、熱が引いたのではなかった。引いたのは別のものだった。
乾いた台地の縁で、旧人の一団が水を飲んでいた。川は細く、岩底が透けていた。北の密林では何かの獣が倒れ、ハゲワシが輪を描いていた。遠い海岸線では波が砂を削り、新しい砂浜の形が生まれつつあった。この星は誰の死にも気づかない。ただ動く。
糸は別の誰かへ向かった。