紀元前298,085年
川が太った。
岸の石が水の中に消えていた。その者は裸足のまま膝まで入り、流れに逆らって上流へ歩いた。泥が足の間から湧き上がるのを感じた。冷たくはなかった。川は生ぬるく、草の匂いがした。
三日前から雨が続いていた。
止んだのは昨朝のことだ。大地は吸い切れないほどの水を受け取り、草の根元から白い菌糸が広がり、木の幹は濡れて黒く光っていた。実が重かった。枝が地面近くまで垂れていた。
その者は川から上がった。
集団は近くにいた。七人、あるいは八人。子どもが二人、老いた者が一人。その者は先頭を歩く。先頭を歩く者が食べ物を見つけ、安全な道を選ぶ。これはずっとそうだった。誰が決めたわけでもなかった。その者の足が、気づけばいつも前にあった。
丘の向こうから声が聞こえた。
人の声ではなかった。低く、引き裂くような音。その者は立ち止まった。腹の奥で何かが収縮した。足裏が地面を確かめた。
草が揺れた。
揺れ方が違った。風ではなかった。獣の大きさと方向がそこにあった。その者は両手を後ろに向けた。集団が止まった。
長い時間、何も動かなかった。
草が再び揺れた。今度は遠ざかる方向に。その者は息を吐いた。肩から力が抜けた。横を見ると、幼い子どもが老いた者の腕にしがみついていた。老いた者は子どもの頭に手を置いていた。何も言わなかった。
その者は前を向いた。
斜面の上に、低い茂みが続いていた。その茂みの奥に、赤く熟れた実が見えた。風が吹いた。実の匂いが鼻の奥まで届いた。甘く、わずかに発酵したような香りだった。
その者は歩き出した。
大地が湿っていた。
赤道に近い低地では、雨が五日続き、川が溢れた。魚が草原へ出てきた。水が引いた後、泥の上に魚の骨だけが残った。鳥がそれを啄んだ。
内陸では別の集団が丘の上に陣取り、谷を行き来する獣の群れを見ていた。子どもたちが岩の陰に隠れて覗いていた。老いた者が何かを声に出した。子どもたちが笑った。何が可笑しかったのかは残らない。
海に近い断崖では、旧人の小さな群れが雨水を岩の窪みから飲んでいた。新しい人間とは別の形の頭骨、別の歩き方。同じ大地を、違う経路で渡っていた。
豊かな季節に人は増える。増えると、場所が足りなくなる。
二つの集団が同じ水場を使い始めていた。声を上げた。石を持った。だが血は流れなかった。一方が引いた。夜になった。
遠い南の沿岸では、一人の者が砂浜に足跡を残したまま、波に消えた。誰も見ていなかった。
大地は今年も雨を受け取った。
草が伸び、実が実り、獣が肥えた。この星はそれを覚えていない。ただそうなった。
糸が繋がった。
実の匂いが風に乗ったとき、その匂いをほんの少し長く残した。
この者は歩き出した。
まだ渡せていない。しかし足が動いた。それで十分か。十分ではないかもしれない。次に渡すのは、足ではなく、目を向ける先のことにしよう。