紀元前297,245年
草が実をつけた年だった。
平原の東端、岩が連なる丘の麓で、二つの集団が同じ水場を使っていた。片方は旧人の一群で、体格は大きく、動きは静かだった。もう片方は、この者が属する集団だ。昼は距離を置き、夜は各々の火で眠った。どちらも相手を追い払おうとしなかった。どちらも近づこうともしなかった。
水場の北、低木が密集する茂みの奥では、子を持たない雌の旧人が一頭の幼い鹿に触れていた。鹿は逃げなかった。その場面を誰も見ていなかった。
西の方角、石灰岩が露出した台地の上で、別の小集団が移動を終えていた。彼らは以前この水場を使っていたが、今はもういない。どこへ向かったのかを知る者はここにはいなかった。
平原の乾いた風が南から北へ吹いていた。草の穂が揺れ、その音は止まらなかった。
大地の上で、複数の集団が同じ季節を生きていた。互いを知らないまま、同じ水を飲み、同じ月を見ていた。
この者が排除されるとするなら、何を残しておけるか。
問いが先に来た。渡すものは、後からついてきた。
水場のそばに生える低木の実、赤みを帯びたそれが、夕方の光の中で際立って見えた。他より色が濃い実が三つ、枝の先に固まっていた。光がそこに集まるように落ちた。
この者は立ち止まった。顔がその方向を向いた。手が伸びなかった。見ただけだった。
渡せたか、渡せなかったか。
あの実は毒ではない。食べれば腹が膨れる。知っていれば、次の日も使える場所になる。知らなければ、ただの景色だ。しかし渡せなかったとしても、この者の目がそこへ向いたことは消えない。次にあの色を見たとき、足が止まるかもしれない。それは渡したことになるのか。それとも、ただ光が落ちたに過ぎないのか。
渡すことと、届くことは、別のことだ。
しかし次は、別の渡し方を試みる。
水を飲んだ。
両手で水面を掬い、顔を近づけ、音を立てて飲んだ。冷たかった。喉の奥まで冷たさが降りていった。
立ち上がる前に、水面に自分の顔が映っているのが見えた。揺れて、崩れた。
水場の端に旧人の足跡があった。大きかった。この者の手のひらより幅が広かった。乾いた泥に深く刻まれていた。古い跡ではなかった。
集団の長老格の男が短い声を出した。低い、鼻の奥から出るような音だった。意味はわかった。戻れ、という音だった。
この者は戻らなかった。
水場のそばに立ち、低木の列を見ていた。夕方の光が斜めに差して、枝の先に実が三つ、光を受けていた。他の実より色が濃かった。
何かが引っかかった。体の中に、引っかかるような感覚があった。
手を伸ばさなかった。長老格の男の声がもう一度した。今度は低くなかった。鋭かった。
この者は振り返り、集団の方へ歩いた。
夜、火のそばで皮を引いた。隣にいた若い女が別の女に何かを伝えた。短い音と、顎をしゃくる動き。意味は直接は届かなかったが、方向がわかった。この者の方向ではなかった。
皮を引く手が止まった。
集団の端に、この者よりも若い二人の男がいた。二人の目が向いていた場所は、この者だった。目を逸らさなかった。
皮引きを続けた。手が動いた。刃が走った。
火が揺れた。風があった。
この者は何も言わなかった。言う音を持っていなかった。