紀元前297,005年
低地の草は膝まで伸びた。
北の丘陵では、別の集団が火を消してから三十日が経っていた。火を消したのではなく、火を守る者がいなくなったのだ。燃料が尽きたのでも、雨が降ったのでもなく、ただ誰も戻らなかった。
始まりの大地の中央部では、四つの焚火が二つになり、その二つのうちの一つが今夜、普段より大きく燃えていた。乾いた枝を積みすぎた。声が多すぎた。音が、夜の獣を遠ざけるより先に、別の何かを引き寄せていた。
東の水場では、旧人の一群が夜明け前に水を飲んで去った。足跡は大きく、指が開いていた。歩き方が違う。体の重心が違う。それでも同じ水を飲んだ。
第二の星は区別しない。
大型獣の群れは南へ向かった。先頭の雌は片耳がなかった。どこかで失った。その群れを追う者と、その者を見ている者と、その者を排除しようとしている者が、同じ夜の下にいた。
月はなかった。
その者の足が、草の上で止まった。
風が草を倒した。一方向に、まとめて。その先に、別の集団の男が三人、しゃがんでいた。
その者は見た。見て、動かなかった。
渡した。見えるものと、見ないふりをする選択の、どちらも。
以前も何かを渡した。温かい石。指の跡。風の向き。渡すたびに、この者が生き延びた。それがよいことかどうかを、与えるものは考えない。考えようとして、やめた。
この者は知りすぎた、と誰かが決めた。
知るとは何か。まだ問いになっていない言葉で、この者が何かを持っていると、誰かが感じた。それだけだ。
次に渡すべきものが、あるかどうか。それだけを考える。
草が倒れた。
風のせいではなかった。風はそっちから来ていない。
脚が止まった。止めた覚えはなかったが、止まっていた。腹の下のほうが冷えた。昼だった。汗が背に張り付いていた。
草の向こうに、背中が三つあった。
見た。
三つの背中は動かなかった。その者も動かなかった。鳥が鳴いた。遠くで。近くでは鳴かなかった。
その者はゆっくりと、右足を後ろに引いた。草が鳴った。三つの背中のうち一つが、首を動かした。
その者は草の中に伏せた。
心臓が喉のあたりで動いていた。顔が地面に触れた。土の匂いがした。腐った葉と、乾いた砂と、何か古いもの。
長い時間が経った。経っていないかもしれなかった。
足音がした。遠ざかった。また来た。また遠ざかった。
空が夕方になっていた。
その者は立ち上がらなかった。もう少し、伏せていた。草の茎が頬に当たっていた。痛くはなかった。ただそこにあった。
それから、立った。
来た方向とは別の方向へ、歩いた。焚火の煙が見えなかった。見つけようとしなかった。
夜が来る前に、岩の影に入った。膝を抱えた。
空腹だった。
それでも動かなかった。何かが、まだそこにある気がした。草が倒れた方向を、その者は何度も思い出した。思い出すというより、体が繰り返した。腹が冷えた感覚を、体がもう一度なぞった。
夜になった。