紀元前296,525年
煙が東から来た。
最初は朝の霞に似ていた。その者は水場へ向かいながら、空の色が違うと気づいた。霞は白い。これは黄色い。喉の奥に、何かが貼りついた。
集団が動いた。
老いた者を引き、子を抱き、皆が南へ走った。その者も走った。だが足が思うように動かなかった。乾季が続いてから、腹の凹みが深くなっていた。走るたびに、腰の骨が皮膚の裏に当たるのを感じた。
炎は見えなかった。煙だけが追ってきた。煙は木の香りがして、それから獣の毛の焦げた臭いがして、それから何の臭いかわからないものになった。
集団は草原の端で止まった。
火は夜の間に進み、夜明けに止まった。風が変わったのだ。焼け跡はまだ熱く、翌朝も地面から白い煙が立っていた。
半数近くの者が、いなかった。
迷子になったのか、炎に飲まれたのか、その者には区別がつかなかった。呼んでも答えない者が何人もいた。子供の声が聞こえなくなっていた。
焼け跡に、食べるものはなかった。
その者は集団の外に座った。
何かを知りすぎた者を、集団は嫌う。その者が何を知っていたか、言葉では言えない。しかし体で示せることがあった。どこに水があるか。どの草が食べられるか。どの方向に逃げるか。
火の後、食料が消えた。
集団の中で、誰かが手振りで示した。こちらへ来るな。その意味はわかった。老いた者と、弱った者と、その者は端に置かれた。食べ物が来ない夜が続いた。
三十日が経ったか、それより多かったか。
その者は焼け跡の縁に座り、黒い地面を見ていた。地面から、細い緑が出ていた。一本。また一本。土の中に何かがある。火の後でも、土の中に何かが残っている。
その者は指先でそれに触れた。
折れなかった。柔らかく、指に逆らわなかった。その者はそれを口の中に入れた。味はなかった。それでも何度も嚙んだ。
日が暮れた。
その者は地面に横になった。背中が地面に触れた。土はまだ少し温かかった。火の残り熱か、昼間の日の熱か、わからなかった。その者は目を開けたままでいた。空に煙の残りがまだうっすらとあった。
星が見えた。
その者は空を見ていた。何かが遠い。何かが近い。その区別が、少しずつ曖昧になっていった。
手が、力を失った。
指先から始まり、掌へと広がった。その者はその感覚を追うように、指を一度だけ曲げた。曲がらなかった。
同じ夜、大陸の別の端では、氷が一枚、岩の崖から崩れ落ちた。音を立てて水に沈み、波紋が広がり、止んだ。雨が降っている地域では、獣が一頭、泥の中で動かなくなった。別の獣が、その傍らを通り過ぎた。第二の星は区別しない。
糸は別の誰かへ向かった。