紀元前296,285年
集団の端に、その者はいた。
岩の張り出した陰。火を管理する場所から少し外れた、誰も来ない側。そこに座っていた。脚が言うことを聞かない日が増えていた。膝の内側が、朝になると固まっていた。
火は燃えていた。
番をするのがこの者の役割だった。湿った枝を嫌い、乾いた枝だけを選んで積んだ。それを繰り返してきた。何年も。灰の中から熾きを拾い上げる手の動きは、今でも正確だった。手だけが、まだ若い頃のままだった。
灰の匂いが服に染み込んでいた。
集団の中で、その者の目が変わったのはいつからだったか。
噴火の後。大地が裂け、空が灰で埋まった後。川が白く濁り、また澄んだ後。その者は何かを見るようになった。火が何かを教えようとしているような、風の向きに何かが含まれているような。そういう見方をするようになった。
それを他の者に伝えようとした。
声で伝えられなかった。手で示そうとした。火を指差し、空を指差し、音を出した。
伝わらなかった。
若い者たちが離れた。その者の目が怖かった。老いた者が怖いのではなく、その者の見ている方向が怖かった。
ある夜、その者は火の側に座ったまま、集団の輪から外された。
誰かが声を上げた。短い声。威嚇の声。
その者は動かなかった。動けなかったのか、動かなかったのか、今となっては誰にもわからない。
石が飛んだ。一つ。肩に当たった。
その者は倒れなかった。ただ少し曲がった。
また石が飛んだ。
その者は立ち上がろうとした。脚が動かなかった。両手を岩についた。
三つ目の石が側頭部に当たった。
倒れた。
火はその後も燃え続けた。誰かが枝を足した。集団の夜は続いた。
夜明けに、その者はまだそこにいた。
呼吸はあった。細かった。
風が吹いた。火の方向から吹いた。灰の温かさが、その者の顔の側を通った。
目が、少し開いた。
火を見た。
炎ではなく、熾きを見た。赤く、静かな、熾き。何度も拾い上げてきた、あの光。
その者の手が、わずかに動いた。岩の表面を、指がなぞった。何かを掬おうとするように。何かをつかもうとするように。
こぼれた。
また動いた。
また、こぼれた。
それから、手が止まった。
低い山の向こう側で、別の集団が川縁に沿って移動していた。子を背負った者が先頭を歩いた。水が濁っていた。止まり、飲むかどうか迷い、また歩いた。空は白く、鳥の声がなかった。誰も声を出さなかった。足音だけがあった。
糸は別の誰かへ向かった。