紀元前295,325年
岩の影に男が倒れていた。
その者は立ち止まった。荷が肩に食い込んでいた。革袋、干した根、拾い集めた平石が四枚。一日かけて集めたものだ。
男は起き上がらなかった。
腹から棒が生えていた。先端が尖っていた。その者は棒を知っていた。旧人の作り方と少し違う。自分たちの集団の若い者が、ここ何日か削っていた棒と同じだった。
足の裏で地面を確かめながら近づいた。
男の顔を見た。知っている顔だった。荷を運ぶとき、隣に並ぶことがあった。名前は呼んでいなかった。音で呼べば応えた、それだけの間柄だった。
血が黒く乾いていた。
その者は革袋を下ろした。平石を下ろした。干した根を下ろした。しゃがんで、棒の根元に触れた。棒は動かなかった。抜こうとしたのか、確かめようとしたのかは、その者自身にもわからなかった。
風が来た。
北から。乾いた草の匂いと、もう一つ、動物の毛のような重い匂い。
その者は立ち上がった。
荷を置いたまま、南に向かって走った。荷は戻って取りに来る、という考えは持っていなかった。脚が動いていた。それだけだった。
集落に戻ると、声を上げた。一つの音だった。しかし短く、鋭かった。
二人の年長の者が出てきた。その者は北を指した。指す角度が、走ってきた方向と少しずれた。年長の者たちは向き合って何かを言い合った。その者の音は、もう一度聞かれなかった。
夜になった。
火の周りに集まった。いつもより数が少なかった。その者は輪の端に座った。火を見た。炎の形が揺れて、棒の先端の形に見えた。そうではないと思い直した。また揺れた。またそう見えた。
腹が鳴った。荷を取りに戻ることを考えた。暗い。遠い。
平石は四枚、あそこに置いてきた。
乾季の終わりが近い台地を、わたしは照らしている。
この五年、集団の境界は動いた。旧人との間に目に見えない線があった。線は固定されていなかった。水場で重なり、草地で離れ、またどこかで接した。衝突は少なかった。しかし少なくなかった。
倒れた男は、その境界が動いた場所で見つかった。誰が棒を刺したか、わたしには見えている。集団の内側の者だった。理由をわたしは語らない。理由は複数あり、どれが本当かも定かではない。
集団の人口は、五年前より増えていた。増えた分だけ、水を求め、根を掘り、獣を追う範囲が広がった。広がった範囲が、他の者たちの範囲と重なった。
台地の北端では、旧人の集団が移動を始めていた。乾季の終わりを感じ取っているのかもしれない。あるいは別の何かを。
南の草地に、獣の群れが降りてきていた。大きな蹄の音が遠く続いていた。
火はいくつか燃えていた。それぞれの集団のものが、見通しのきく丘の上に別々に。
夜はまだ長かった。
北から風を送った。
棒の根元に触れた手が止まった。それから立ち上がり、走った。
生きた。それを喜ぶかどうかは、わたしには関係がない。次に渡すべきものを、考えていた。荷を置いたまま逃げたこの者に、平石は残っている。あの石は、まだあそこにある。明日、取りに戻るかどうか。その判断の中に、何かを滑り込ませられるかもしれない。石の形の中に。重さの中に。手が石を握る、その瞬間の中に。