紀元前295,085年
豊穣の季節が続いていた。
大地の南端、草が地平まで続く場所で、集団の数が増えていた。雨は定期的に来た。獣の群れが川の近くに集まった。子どもたちが走り回り、女たちが芋に似た根を掘り、男たちは石を叩いていた。
その集団の北、半日歩いた場所に別の集団がいた。互いの存在を知っていた。水場を共有することがあった。しかし近づくと声の調子が変わる者たちがいた。目が細くなる。腕が動く。食料が豊富な今でさえ、その変化は消えなかった。
さらに北の、岩の多い台地に、顔立ちの違う者たちが住んでいた。額が前に出て、眉骨が厚い。言葉は違う。しかし火を持っていた。石を割っていた。夜、遠くでその火が見えることがあった。
星は照らす。
草原と岩台地と水場と火、それぞれに。判断しない。南の集団が増えたことも、北の者たちの火が夜に揺れていることも、同じ光の中にある。
豊穣は続く。しかし大地は記憶していない。この季節が続くと約束したことは、一度もない。
糸が繋がった。
第186世代。十歳。
最初の者を覚えている。覚えているということは、何なのか。問いは今も返ってこない。
この者に渡す。
石を運んでいた。火のそばで、大人たちの動きを目で追っていた。群れの中で何かが揺れていた。声の調子が変わる瞬間があった。あの低い音。腕が上がる前の沈黙。
熱い空気がこの者の右頬を打った。
火から来た風ではない。集団の向こう、北の方角から、誰かが叫んだ。
この者の足が止まった。
叫んだのは何を意味するのか。この者はまだ知らない。渡せるのはそこまでだ。次に渡すべきものが、もう見えている。
石は重かった。
胸の前で抱えると、顎の下まで来た。大きすぎる石だった。しかし大人に言われた。この者は運んだ。
火のそばに積む。もう一度往復する。また積む。
火は大きかった。昨日より大きい。集団の誰かが枝を足し続けていた。空が暗くなって、火の明るさが地面に広がった。その者は積んだ石の端に座り、膝を抱えた。
大人たちの声が聞こえた。
同じ言葉が繰り返されていた。この者が知っている音ではなかった。大人たちの口が速く動く。一人が立ち上がり、北を向いた。もう一人が立ち上がった。
右頬に何かが触れた。
風ではない、と思った。熱い何か。息のような。しかし誰もいなかった。
その者は顔を上げた。
北の方角で、遠く、火が揺れていた。あの岩台地の方向だ。その者は何度か見たことがあった。あそこにも誰かがいる。大人たちはそれについて、低い声で話すことがあった。
声が届いてきた。
叫び声だった。
人の声だが、この者の集団の誰かの声ではない。近い。木の向こうあたり。男の声だ。低くて、何かが裂けるような音がした。
その者の足が地面に貼りついた。
石を抱えたまま、動かなかった。大人たちが一斉に立ち上がった。
その者は石を下ろした。
火のそばに残った。誰かが走り去っていった。誰かが戻ってきた。その間に何があったのか、この者には見えなかった。
夜が深くなった。
北の岩台地の火は、まだ燃えていた。