紀元前294,725年
干ばつは五年目に入っていた。
川床は白く乾いた。かつて水が流れた場所に、貝の殻が散らばっていた。小さなもの、薄いもの、触れると粉になるもの。雨の記憶を持つ者はまだいたが、その記憶を伝える言葉がなかった。
北の岩場では旧人の一群が動いていた。背が低く、肩が広く、眉の骨が前に張り出していた。彼らも水を探していた。新しい人と同じ方向に歩き、同じ場所で立ち止まり、同じ枯れた泥を掘った。言葉は交わらなかった。視線だけが重なり、それぞれが別の方向に離れた。
草原の南端では、一つの集団が四十日かけて移動してきていた。子どもが三人、途中で死んだ。老いた者が一人、自分から遅れて消えた。残った者たちは皮の水袋を交互に抱えて歩いた。袋の底に残った水が揺れる音だけを頼りにした。
集団同士が近づいていた。水場という概念がまだない時代に、水の匂いがする方向に全員が引き寄せられていた。
始まりの大地の空は乾いていた。雲がなかった。日差しが地面を割り続けていた。
腐りかけた木の根が、土の表面からわずかに持ち上がっていた。
根の裂け目から、湿った匂いが立ちのぼっていた。朝の空気に混じって、黒い土の匂い。水の匂いではなく、水がかつてあった場所の匂い。
この者の鼻が、一瞬、その方向に向いた。
向いて、それから別のものを見た。倒れている者のほうを。
渡したものが別の引力に負けた。それはそういうことだ。ただ、この者の鼻孔はあの匂いを覚えているかもしれない。覚えているとして、それが何かを変えるか。次に渡すとしたら、何を。根ではなく、もっと深いところにあるものを。
水場が消えた日から、集団の中に別の種類の緊張が生まれていた。怒りではない。疑いでもない。もっと静かなもの。誰がどこに座るか。誰が先に飲むか。順番が変わると、目が合う時間が長くなった。
その者は水を多く必要としない体だった。喉が渇く前に渇きを知る、という種類の体ではなかった。渇いてから気づく。遅れて気づく。それでもまだ動けた。
老いた女が倒れた。
集団の中で最も長く生きている者だった。誰の母でもなく、誰の配偶者でもなく、ただ長く生き続けた者だった。その者は彼女の傍に座った。言葉がなかった。手を握った。女の手は軽かった。骨と皮だけになっていた。
女は何かを言おうとした。口が開いた。音が出なかった。そのまま口が開いたまま、動かなくなった。ハエが一匹、口の端に止まった。その者は手を離さなかった。
集団の中の誰かが、その者のほうを見た。
長い視線だった。
その者は女の手を置いて、立ち上がった。視線の意味がわかった。わかりたくなかった。けれどわかった。
知りすぎた者が消される、その「知りすぎた」の意味を、この者はまだ言葉にできなかった。ただ何かが変わったことは、腹の底で感じていた。食べていないのに、胃が重かった。