紀元前294,245年
夜明け前に目が覚めた。
岩盤の上に寝ていた。脇腹に石の角が食い込んでいて、それが目を開けさせた。空はまだ黒く、東の縁だけがわずかに薄くなっていた。
隣で誰かが寝息を立てていた。その者の少し離れたところで、また別の誰かが。集団は増えていた。斜面のあちこちに身体が丸まっていた。
その者は起き上がり、岩の端まで歩いた。
崖の割れ目から水が滲む音がした。細い音だった。夜の静けさの中でそれだけが続いていた。手をかざすと、冷気が指先に触れた。水ではなく、空気だった。水はもう少し下に来て初めて岩を濡らしていた。
喉が渇いていた。
岩を伝って下りた。足の裏が濡れた面を探した。手が壁を押さえた。暗い中で体が先に動いた。水の音が大きくなった。口を近づけると、岩から染み出すしずくが唇に当たった。
その者は飲んだ。
冷たかった。舌の奥まで冷えた。もう一度。もう一度。
飲み終えて、その場に座った。
夜明けが来ていた。東の稜線が赤くなり、雲の裏側が橙に染まった。斜面の草が色を取り戻していった。遠く、低地の方向に、水場がある。あの方向に別の集団がいた。
その者は膝を抱えた。
昨日、何かがあった。言葉ではない。音でもない。低地の方から、男たちが二人来た。その者の集団の男たちが出ていった。長い時間、何かがあった。声が上がった。声が収まった。男たちは去った。
その者の腕に残った痕が疼いた。誰かに掴まれた跡だった。
誰かが来たかどうかを確かめに来たのか、それとも何かを取りに来たのかは、その者にはわからなかった。ただ、男たちの顔が、来たときと去るときで違った気がした。
光が完全に斜面に差し込んだとき、集団の誰かが目を覚まし始めた。
その者は立ち上がった。
腕の痛みがまだあった。動かすと鈍く重かった。それでも手を開いた。閉じた。開いた。
手は動いた。
豊穣が続いていた五年だった。
北の端では、崖の水場を持つ集団と、低地の水場を持つ集団が、互いの存在を知りながら生きていた。食べ物があった。子が生まれた。集団は膨らんだ。膨らんだものは、互いの縁を意識した。
その者の集団は斜面に留まり続けた。崖から滲む水は細かった。人が増えるほど、細い水で全員の渇きを満たすことの難しさが増した。
低地の集団は大きかった。水は豊富で、根や実も多かった。その分、男たちの動きが増えた。斜面の方へ、何度か来た。
すべての来訪が争いではなかった。ある時は、ただ見ていった。ある時は、腐った実を置いていった。ある時は、声を上げて戻っていった。
緊張は言葉を持たなかった。音と距離と眼の向きで伝わった。
旧人の姿が遠くに見えることがあった。彼らは集団の近くに来なかった。境界を知っていた。あるいは持っていた。人の集団も境界を持とうとしていたが、それはまだ形を持たなかった。
気候は穏やかだった。しかしその穏やかさが積み重なるほど、集団は増え、増えるほど、狭さが生まれた。
星はそれを照らした。判断しなかった。
腕の痛みが疼いた瞬間、空気が動いた。
崖の裂け目の方から、ではなく、その者の顔の高さを、横に流れていった。温くも冷たくもない風だった。
その者は振り向かなかった。
手を開いた。手を閉じた。それだけだった。
それだけで——
渡した。痛みではなく、その後に手を動かしたことを。傷ついた手が開いたことを。何かを持てるかどうかを確かめたことを、ではなく、確かめること自体を。
次に渡すべきものが見えない。見えないのではなく、まだこの者の手が何を掴めるのかがわからない。
しかしこの問いは——以前も持っていた気がした。