紀元前294,005年
北の岩が落ちた翌年、雨が変わった。
季節が変わるたびに来ていた雨が、来なかった。空は白く渇き、土は表面から割れた。割れ目は指の幅から手の幅になり、やがて足を踏み外すほど深くなった。川床の石が、去年の夏には水の中にあった。今年はただの石として陽に晒されている。
集団は南へ動いた。
動きは緩やかではなかった。一日で決まった。前の夜まで誰もそこを離れようとしていなかったのに、朝に一人が荷を持って歩き始めると、半数がついた。残った半数は夕方にはいなくなっていた。別の方向へ。
二つの集団になった。
南へ向かった集団は、三日目に別の集団と出会った。川の曲がり角、岩が水を遮っている場所。そこに先客がいた。旧人だった。背が低く、肩が広く、顔の造りが違った。どちらも立ち止まった。どちらも下がらなかった。
最初の夜は火を別々に焚いた。
二日目の朝、旧人の集団の一人が、川の縁で魚を追っていた。その者の集団の若い男もそこにいた。二人は川を挟んで向かい合い、それからほぼ同時に同じ方向へ動いた。魚は逃げた。どちらも笑わなかった。どちらも怒らなかった。
ただ立っていた。
水が減っていた。両方にとって、そこが最後の水場に近かった。緊張は音ではなく姿勢にあった。肩の位置、視線の落とし方、足の向き。言葉はなかったが、互いが読んでいるものは同じだった。
三日目の夜、旧人の集団が上流へ動いた。
その者の集団は残った。誰も追わなかった。誰も喜ばなかった。火の前に座り、それぞれが自分の方向を見ていた。
水は増えなかった。
五日後、集団の中で最年長の女が川縁で倒れた。起き上がらなかった。だれかが近くに来て、しばらく横に座った。それから立ち上がり、集団の方へ戻った。女はそのまま、川の音の中に残された。
東から風が来るようになったのは、その頃だった。
乾いていた風が、少し変わった。水の匂いとは言えない。しかし石の匂いでもない。何かが混じっていた。土が違う場所の匂い。集団の中で、老いた男が一人、東を向いて長く息を吸った。それだけだった。しかし翌日、集団は東へ動いた。
理由は誰も言わなかった。
東の風の中に、腐った葉の湿り気を混ぜた。
その者の集団の中の一人、老いた男の鼻が、それを一瞬止まって吸った。男は翌朝、東へ歩き始めた。集団がついた。
その者を運んでいる腕が、東へ向いた。
渡せたのか。男に渡ったのか、それとも男はもとから東を知っていたのか。問いは残る。しかし次に渡すものは決まっている——東に着いたとき、水の縁に何が生えているか。それを、誰かの目が見るだろう。
運ばれながら、東の風を顔に受けた。
目を開けていた。空を見ていた。空は白かった。風が来るたびに鼻が動いた。何かを知っているわけではなかった。
ただ、その顔が東を向いていた。