紀元前293,765年
台地の縁で火が燃えている。
乾いた草が先に燃え、次に灌木が燃え、風が変わると火は方向を変える。台地の上のいくつもの命が、その光を遠くから見ている。逃げる者、留まる者、火の前に立って腕を広げる者。理由はそれぞれの体の中にある。
台地の南側では二つの集団が接している。接しているというのは、同じ水場に近い時間に来るという意味だ。片方の集団に旧人が混じっている。旧人は背が低く、額が張り出している。もう片方は、顎が細い。水を飲む動作は同じだ。どちらも腹を下にして、掌で水をすくう。しかし互いを見る目の動きが違う。止まる。確かめる。離れる。
台地の反対側、西の斜面では、誰かが崖の岩肌に手形を押している。赤い土を水で溶いて、手のひらに塗り、岩に押しつける。何度も。乾くと色が変わる。その者はそれを見ている。見て、また手を塗る。
火はまだ燃えている。台地の上に、夜が来ようとしている。
石の割れ目から、熱い空気が上がってきた。
その者は足の裏でそれを感じた。一歩退いた。もう一歩退いた。
退いた先に、別の道があった。
—かつて、同じように感じた者たちがいた。同じように退いた者も、退かなかった者も。退いた者が長く歩いたかどうか、答えが出ないまま時間が過ぎた。次に渡すべきものは、また別の形になるだろう。渡すことはやめない。
火が来た夜、その者は走らなかった。
集団の半分はすでに南へ向かっていた。足音が草を踏む音、子どもを抱えた者の息、それらが遠ざかっていった。その者は台地の縁に立ったまま、火を見ていた。熱が顔の右側にだけ当たった。左側は夜の空気だった。
石を拾った。持ち替えた。また持ち替えた。
足の裏が熱くなった。石の割れ目のあたりから、何かが上がってくる。その者は足を動かした。右へ。また右へ。草の上に出ると、熱は消えた。足の裏が涼しくなった。その者は止まった。
前には別の道があった。獣の通り道だった。その者はそれまで使ったことがなかった道だった。
歩いた。
草が足首に触れた。虫の音が近くなった。遠くで集団の声がした。その者は声の方向へ進んだ。
夜明けに、集団と合流した。
しかし集団の中の何人かがその者を見る目が、戻る前と変わっていた。何かを確かめるような目だった。その者にはその違いがわからなかった。ただ水が飲みたかった。革袋を持った者のそばに行って、手を出した。
革袋は渡されなかった。
その者は手を引っ込めた。少し離れた場所にしゃがんだ。石を地面に置いた。また拾った。