紀元前293,405年
石を握ったまま、動けなかった。
向こう側の集団が動いている。三人が前に出た。額の低い者たちだ。背が低く、肩が広い。その者の集団の中で、年老いた雄が声を上げた。低い、腹に響く音だった。
その者は石を握りしめた。
二十歩。十五歩。向こうの三人が近づいてくる。その者の隣で若い雌が後ずさりした。背後の者たちも動いた。散る気配。
その者だけが動かなかった。
なぜかはわからない。足が言うことを聞かなかったわけではない。ただ、向こうの三人の中央を歩く者の目を見ていた。小さな目だった。黄色みがかった白目を持つ、しかし怒ってはいない目だった。
向こうの者が立ち止まった。
何かを持っていた。干からびた獣の脚だった。毛が残っていた。
その者の集団の年老いた雄が吠えた。石を投げた。向こうの三人の足元に落ちた。
中央の者が、獣の脚を地面に置いた。そして下がった。
その者は石を持ったまま、置かれた獣の脚を見た。
年老いた雄が近寄り、蹴った。
その夜、その者は集団の外れで座っていた。蹴られた獣の脚はそのまま平原に残っている。誰も拾わなかった。
火の側では声が続いていた。何かを決める声だった。その者には聞こえていた。しかし呼ばれなかった。若い狩り手は呼ばれない。決める声の中に混ざれない。
その者は膝を抱えた。
向こうの者の目が頭の中にあった。怒っていなかった。渡そうとしていた。
翌朝、集団の中に緊張が満ちていた。年老いた雄が三人の若い雄に何かを命じていた。方向を示す腕の動きだった。向こうの集団が昨夜どこかへ移動したらしい。
その者は命じられなかった。
しかし、ついていった。
北の岩地に霜が降りていた。足跡があった。向こうの集団の足跡。その者は足跡を追う三人の後ろを歩いた。
足跡は川に消えていた。
三人が戻ろうとしたとき、その者だけが川岸に留まった。
川の向こうに、煙が見えた。
年老いた雄の命じた三人が戻ってきた。その者の腕をつかんだ。引いた。その者は引かれながら、川の向こうの煙を見ていた。
夕方、集団に戻った。
その者は年老いた雄に近づき、川の向こうに煙があったことを、腕と声で示そうとした。
年老いた雄は聞かなかった。
その者の声を遮った。短い、鋭い音で。
その者は黙った。
火の周りで夜が始まった。その者は端に座った。川の向こうの煙のことを、他の者に伝えようとした。若い雌が顔をそむけた。別の若い雄が笑う音を出した。
その者は口を閉じた。
夜が深くなった。その者は集団の中にいたが、その者の周りだけ、空間があった。誰も隣に来なかった。
二日後、その者は集団の移動についていくことができなかった。
前を歩く者たちが速かったわけではない。その者の足が問題だったわけでもない。
ただ、誰も待たなかった。振り返らなかった。
その者が立ち止まったとき、集団の後ろ姿はすでに岩の陰に消えていた。
その者は立っていた。
平原に、一人。
北から風が来た。冷たかった。
その者は川の方向を向いた。向こうに煙があった場所。足を踏み出した。一歩。もう一歩。
岩地を歩いた。霜が溶けた土は柔らかく、足が沈んだ。川に着いた。水は冷たかった。渡った。
対岸に、足跡があった。大きな足跡と、小さな足跡が混じっていた。
その者はその足跡を追った。
日が傾いた頃、向こうの集団の野営跡を見つけた。灰が残っていた。骨があった。食べた跡だった。
その者は灰の前にしゃがんだ。手を近づけた。まだ、かすかに温かかった。
立ち上がり、足跡の続く方向を見た。
歩き出した。
北の岩地に、霜が降り続けている。
この五年、大地は乾いた。水場が縮み、草が薄くなり、獣の群れが移動した。集団は獣を追い、水を追い、互いの縄張りの端で鉢合わせた。
人の数は減った。干ばつが奪い、飢えが奪い、集団同士の衝突が奪った。生まれる者もいたが、育つ前に消えた。始まりの大地の全体で、半数近くが入れ替わった。
二種の者が同じ大地を歩いている。額の形が違う。骨の厚さが違う。しかし同じ水場に集まり、同じ獣を追い、同じ霜の朝に身を縮める。時に物を置いて下がる。時に石を投げる。
どちらが正しいという話ではない。
大地は乾いたまま、どちらにも同じように降りかかっている。
今、一人の者が二種の集団の境を越えて歩いている。自分の集団から外れた者が、向こうの集団の足跡を追っている。大地の上では、これは珍しいことではない。外れた者は外れるものだ。しかし、追う者がいることも、まれにある。
北の風が吹いている。灰の温もりがまだ空気に残っている場所で、その者の足が続いている。
川の向こう側で、この五年はまだ終わっていない。
灰の温もりに、その者の手が触れた。
熱ではなかった。ほんの、かすかな温度だった。しかし火が確かにそこにあったことの、残り。
その者の手の平に、その温度が落ちた。
受け取った。
また別のものを渡すべきか、まだわからない。しかし向こうの集団の足跡は続いている。その者の足もまだ動いている。
渡した温もりが、足を動かし続けているのか。それとも、渡さなくても歩いていたのか。
次に渡すべきものが何かは、もうわかっている。