紀元前292,805年
始まりの大地の東側で、何かが動き始めた。
目に見えない何かだった。川の水がそれを運んだのか、風がそれを運んだのか、あるいは集まりすぎた体と体の間で生まれたのか、この星には分からない。分からなくとも、見えていた。
最初に倒れたのは、幼い者だった。次に、産んだばかりの者。それから年老いた者。腹が膨らみ、皮膚が赤く爛れ、声が出なくなり、体が自分のものでなくなっていった。死ぬのに名前はいらなかった。倒れた場所にそのまま沈んだ。
集団の中心部から、静寂が広がった。声が多かった場所が、静かになった。火の周りで歌っていた者が、翌朝に動かなくなった。子を抱いていた者が、子と共に倒れた。
遠く離れた北の地では、別の種の群れが岩の庇の下で雨を避けていた。彼らは病を知らなかった。人の死も、この大地で何が起きたかも、知らなかった。
始まりの大地では、半数以上が消えた。
生き残った者たちは、理由が分からなかった。殴られたのでもなかった。獣が来たのでもなかった。ただ、いなくなった。
皮が腐る匂いがした。
与えるものは川の上流に注意を向けさせようとした。水の流れる音が変わっていた。上流の水が澄んでいた。匂いが薄かった。
この者は川辺に近づかなかった。倒れた者たちの側を離れなかった。
渡せなかった。渡した先を、この者は選ばなかった。ならば次に渡すべきものは何か。上流の水ではなく、もっと前に渡すべきものがあったのかもしれない。匂いで気づかせることができるなら、腐臭が来る前の、かすかな違いを。渡せるか。渡せるとすれば、いつか。
火は消えなかった。
それだけだった。他のものは次々と消えていったが、火だけは、この者が守っていたから消えなかった。
最初に倒れたのは、声の大きな若い者だった。腹を抱え、地面に膝をついた。その者の背を、この者は叩いた。強く叩いた。何かを出させようとした。出なかった。
翌朝、その者は冷たかった。
次に倒れたのは二人同時だった。母と、その胸に顔を埋めていた子だった。二人とも皮膚が赤くなっていた。手が届かないところが、赤かった。
この者は皮を剥ぐ石を持ったまま、しゃがんでいた。
声を立てなかった。岩を拾った。置いた。皮を剥ぐ石を持ち直した。
集団が小さくなっていった。火の周りに座る者が減った。減ると、隙間が増えた。隙間に風が入った。火が揺れた。
この者は揺れた火に枝を足した。
死ぬ者が出るたびに、残った者が少し離れた。近づくことを怖れた。体が怖れた。近づくな、という声ではなく、足が止まった。
この者の足も止まった。
止まったまま、倒れた者を見ていた。
腹が鳴った。食わなくてはいけなかった。それが分かっていた。体が分かっていた。
川へ行った。しかし川のどこかが、いつもと違っていた。水の色ではなかった。音でもなかった。この者の足が、水の手前で止まった。なぜか分からなかった。ただ止まった。
戻った。上流へ行かなかった。
火の番に戻った。
枯れた草の根を噛んだ。味がなかった。噛み続けた。
夜、火を挟んで向こう側に座っていた者が、横になった。横になったまま、朝になっても起き上がらなかった。
この者は立ち上がり、その者に近づいた。肩を押した。動かなかった。
火の横に戻った。
枝を足した。