紀元前292,565年
運ばれていた。
大きな者の背にくくりつけられ、揺れていた。皮が顔に当たる。匂いがする。汗と、煙と、もっと古い何か。その者はまだ、それを匂いとは呼ばない。ただそこにあるものとして、吸い込む。
群れが動いていた。
草が腰まである。足元が見えない。前を行く者の背中だけが見える。時々、誰かが転ぶ音がする。立ち上がる音がする。また歩く音がする。
やがて、止まった。
背負う者が立ち止まり、その者も止まった。前の方で、音がしていた。別の声だった。低く、続く声。知っている声ではなかった。
その者は、背負われたまま、首を動かした。
草の上に、顔があった。知らない顔だった。皮膚の色が違う。目の形が違う。その者は声を出さなかった。泣かなかった。ただ、見た。
相手も見ていた。
子どもだった。小さな子ども。その者より少し大きいか、同じくらいか。泥で膝が汚れていた。手に、石を持っていた。尖った石ではなかった。ただの石だった。
群れの前の方で、大きな声が上がった。
背負う者が向きを変えた。その者の視界が回った。草、空、また草。知らない子どもの顔が、横に流れて、消えた。
群れが走り始めた。
揺れた。何かが割れるような音がした。叫びが上がった。その者は、揺れながら、草の茎だけを見ていた。茎が揺れる。揺れる。揺れる。
止まった。
背負う者が倒れた。
その者は地面に落ちた。顔から落ちた。土が口に入った。泣いた。泣きながら起き上がった。背負う者は動かなかった。その者は背負う者の腕を引いた。引いた。引いた。
腕は重かった。
西の平原の草が、血の匂いを吸っていた。
二つの群れが触れた。百年近く同じ大地の上を互いを知らずに動いてきた群れが、草の中で、声を交えた。最初の声は驚きだったか、警戒だったか、それは分からない。ただ、次の声は違った。
岩が投じられた。骨でできた棒が振られた。全部で三十ほどの者が入り乱れた。争いは短かった。長く続けるだけの余力が、どちらの群れにもなかった。
終わった後、草の上に四つの者が残った。二つはこちらの群れ、二つは向こうの群れ。どちらも動かなかった。動いた者たちは、それぞれの方向へ散った。
北の崖の上では、鷹が一羽、輪を描いていた。
大地の奥では、別の群れが火を管理していた。夜に燃やし、朝に埋め、また夜に燃やす。その繰り返しの中で、一人の老いた者が、煙の形を見続けていた。何かを読もうとするように。読めないことを知りながら。
五歳から十歳になるこの五年の間、この大地の人口はわずかに減った。気候は安定しているが、群れの数が増えた。増えた群れが触れる回数も、増えた。触れた結果は、常に同じ方向を向くわけではなかった。
夜が来た。
草は寝た。星が出た。どちらの群れが消えたのか、空には関係がなかった。
石を持っていた。あの子どもが。
尖っていなかった。それでいい。尖ったものは後で渡せる。
草の揺れ方を、その者の頬に当てた。どちらへ逃げるか、風が知っていた。受け取ったかどうかは——
次に渡すべきものが、もう見えている。