紀元前292,445年
大地の南端では、潮が引いた干潟に貝が積み上げられていた。手のひら二つ分、膝まで、腰まで、肩まで。積まれた貝の山が点々と干潟に並び、小さな丘のように見えた。雨は適量で、川は岸を越えなかった。果実は熟れた順に落ち、落ちたものを拾う手があった。長い穏やかさの中で、集団は膨らんでいた。
子が生まれた。また生まれた。生まれた子が歩き、その子がまた子を持った。以前なら一冬に半分が消えた寒さが、来なかった。獣は遠く、水は近く、木の実は重かった。火の番をする老いた者が、若い頃とは違う、と言った。声が届く範囲にいる者が頷いた。声が届かない遠くの者は、ただ食べ、眠り、また食べた。
しかし豊かさの中で、別のものが育った。
誰が一番大きな木を知っているか。誰が水場への道を知っているか。知ることは力だった。力を持つ者は食べ物を多く受け取った。子が多く生まれた。末端で食料を運ぶ者は、知ることが少なかった。知ることが少ない者は運ぶだけだった。これは以前からそうだったが、集団が大きくなるほど、差は開いた。
岩棚の上の旧人たちは変わらなかった。腰が低く、顎が前に出ていた。しかし火の番をする。同じ川から水を飲む。冬に皮をまとう。現生人類の集団がそこに来た時、旧人たちは退かなかった。退かなかったが、攻撃もしなかった。石と石が触れる音だけが、崖の間に響いた。
夜、二つの火が別々に燃えた。
現生人類の集団の中で、ある者が言い始めた。音と身振りを交えた、短い繰り返しだった。旧人を遠ざけろ。旧人がいるから水場が狭い。旧人がいるから果実が減る。その声は一人から二人へ、二人から四人へ広がった。はっきりと届いた者もいれば、音としてしか受け取らなかった者もいた。
その声の届かない場所に、一人いた。
食料を運ぶ末端の者だった。水場と火の間を往復するだけで、集まりには近づかなかった。しかし近づかなかったからこそ、旧人の老いた一人と目が合ったことがあった。老いた旧人は革袋に水を入れていた。現生人類が使うものと形は違ったが、水を入れているのは同じだった。
その者はその日のことを何度か思い出した。何も言わなかった。
声が集まる場所で、ある朝、何かが変わった。声が大きくなった。身振りが激しくなった。末端で運ぶ者の名が、その声の中に混じった。その者が旧人と同じ水を飲む姿を誰かが見ていた。その者が旧人に近い場所にいたことを誰かが覚えていた。
集団が大きくなるほど、見ている目も多かった。
火の近くに、折れた枝があった。先端が炭になって尖っていた。そこに光が落ちた。岩の面に触れれば線が引けた。
その者は枝を拾った。岩に触れた。線が引けた。しばらく触れた跡を見て、枝を地面に置いた。
それで何ができるのか、まだわからなかった。しかし次に渡すなら、逃げた先の道を引けるものを、と思った。それとも、逃げることをまず渡すべきか。
枝を置いた後、名前が呼ばれた。
声ではなく、身振りだった。来い、という動きではなく、あちらへ行け、という動きだった。
その者は足を止めた。荷を持ったまま立っていた。集団の外縁の方向に、身振りが繰り返された。
岩を一つ拾った。置いた。また拾った。
荷を持ったまま、外縁の方へ歩いた。